第50回脈管学会総会

第50回日本脈管学会総会開催にあたって
会 長 重松  宏

 1959年に慶應義塾大学生理学教室の故林髞教授,広島大学生理学教室の故西丸和義教授を中心に,東京大学第一外科学教室の石川浩一教授を含む13人の世話人により日木脈管学会設立が起案され,1960年 9 月に慶應義塾大学で設立総会が開催されて日本脈管学会が発足し,本年2009年に第50回総会を開催するに至りました。記念すべき第50回総会をお世話させて頂く機会を与えて頂いたことを,誠に光栄に存じます。この場を借りまして,会員の皆様方に厚く御礼を申し上げます。
 さて本学会は,解剖学・生理学・薬理学・病理学・内科学・外科学・皮膚科学・整形外科学・医工学など,多くの分野に別れて別個に行われている脈管学に関する診療や研究を,全体的な視野に立って横断的に鳥瞰し,臨床医学や基礎医学両方面の脈管学研究者が互いに密接に接触して研究の進歩を諮ることを目的として発足致しました。その後の50年の間には,臨床系・基礎医学系の進歩,疾病構造の変化は著しく,脈管学の分野における臓器や病態,疾患あるいは治療手技に基づく細分化が進み,微小循環・静脈・リンパ・血管外科・血管内治療・動脈硬化・血栓止血・カテーテルインターベンションなどを主な検討対象とする学会が創設され,独白の方向性をもって運営されて参りました。学問の進歩とともに各領域が分化していくのは当然のことでありますが,研究の方法論や治療手技に共通することが少なくないことも明らかになり,改めて全体的な視野に立っての統合が求められるようになって来ました。そこで本総会では,脈管学に関係の深い諸学会や難治性血管炎調研究班などの御協力を得て,それぞれの分野での最先端治療や研究,トピックスを取り上げて頂き,共催シンポジウムを中心にプログラムを構成致しました。また,第一三共,バイエル,アステラス,大塚の各社で独自に展開している研究会やシンポジウムを,本総会に共催して発表して頂くことになりました。関係各位の御協力に深謝申し上げます。
 西丸記念講演には,血管新生療法にいち早く取り組まれてきた浅原孝之先生に「幹細胞生物学の血管医学への応用」を御講演頂けることになりました。また,第50回を迎えることを記念して,日本脈管学会の50年をふりかえる特別企画を設けました。日本脈管学会を設立された石川浩一先生,学会発展に大きく寄与された田辺達三先生,日本脈管学会初代理事長を務められた矢崎義雄先生をお招きし,これまでの半世紀をふりかえり,また将来への提言を含め,お話しを伺うことと致しました。司会には「脈管学」の編集長を長く務められた多田祐輔先生にお願い致しました。海外からの招請講演には,国際脈管学会会長のSimkin先生を始めとして,4 名の先生方にお願い致しました。17項目の要望演題やシンポジウムなどには,300題近い演題応募を頂きました。また,新たな取り組みとして始まった脈管専門医の位置付けを明らかにするために,循環器系専門医問題について討議を行うことと致しました。一方,血管疾患を扱う機会が急増している医療現場でのコメディカルの役割は大きく,情報交換や啓蒙活動の場として,フットケアセミナーを開催することと致しました。
 1976年に石川浩一先生が,1998年に矢崎義雄先生が会長を務められた国際脈管学会(IUA: International Union of Angiology)は日本脈管学会と深い関係にありますが,2 年に一度開かれる世界大会の間に各Chapterで大会を開催しております。今回は,本学会が50年を迎えることもあり,Asian Chapter Congress of the IUAを同時開催することになりました。アジアからは13カ国と地域が参加しており,末梢動脈疾患の疫学や治療の現況を討議するシンポジウムやfree paperで構成致しました。
 会期の第 2 日目,また 3 日目には,関連する研究会や講習会,セミナー,市民公開講座などを例年通り開催致します。企画・運営をお願いしました先生方の御尽力,御協力を感謝致します。
  日本脈管学会も本総会を転機として新たな50年の始まりを迎えます。研究の進歩や治療成績の向上のために学会があるという原点に立ち,それらに大きく寄与する統合的学会として脈管学会が更なる発展を遂げるよう,多数の会員諸兄,コメディカルの方々の御参加,御討議を心よりお願い申し上げます。

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