第45回脈管学会総会

第45回日本脈管学会総会開催にあたって
会 長
安田 慶秀

 第45回日本脈管学会を2004年10月28日(木),29日(金),30日(土)の 3 日間,札幌市で開催させていただきますことは大変光栄であり,この機会を与えていただきました関係各位に心からお礼を申しあげます。
 21世紀は脈管学の世紀であります。日本脈管学会は,脈管学に関する研究を総合的に推し進める学会として発展してまいりました。高齢化社会の進展とともに生活習慣病,動脈硬化症が急増しており,QOLを重視した患者さんにやさしい治療法が求められております。近年,研究の個別化が進む中で,統合学会の運営が難しくなっておりますが,一方では心臓血管疾患に対する再生医療や遺伝子治療,動脈瘤や動脈閉塞に対する血管内治療などの低侵襲治療が進められるなかで基礎系の研究成果が臨床に直結し,即,応用される時代となっております。また,放射線科医と血管内科医あるいは血管外科医のより密接な共同作業を必要とすることが多くなってきました。
 本学会は生理学者,病理学者を始め臨床医学系では血管外科医,血管内科医,放射線科医,循環器科医など多くの分野の研究者,臨床医が一堂に会するユニークな学会であり,時代の要望に応えるべく日本脈管学会の果たす役割がいよいよ大きくなってきております。学会活動の一層の活性化を目指して2003年度総会では学会規則改定が行われ,将来の法人化にも対応できるように「会長」は「理事長」となり,学術総会を担当する「会頭」は「学術総会会長」と変更されました。
 第45回日本脈管学会総会のテーマは「新たなる脈管学の展開-分化と統合-」とさせていただきました。学術集会の目的は,脈管学に取り組む内外の基礎系研究者,臨床家が一堂に会し,学術発表と討論を通じて現時点における脈管学の到達点と問題を明らかにし,次のステップへの発展をはかることであります。学術集会を通して会員相互の共同研究の発展がはかられれば望外の幸せと考えております。プログラムは,西丸記念講演を理事長の矢崎義雄先生にお願いし「脈管研究の新しい潮流-ゲノム時代を迎えて」を講演していただきます。
 今回は357題に上る多数の演題を応募いただき,そのうち344題を採用させていただきました。学術集会が実質的に 2 日間となるなかで,一般演題発表時間を確保するため特別企画プログラムの大幅な見直しを行いました。招請講演は,Sellke先生(Harvard); [Therapeutic coronary angiogenesis: Can we improve our results?]とLiao先生(Harvard);[Rho-kinase in atherosclerosis and vascular inflammation]にお願いいたしました。シンポジウムは,大血管,下肢動脈閉塞,動脈硬化,血管内治療の 4 テーマで,新しい試みとして各シンポジウムの座長の先生方にキーノートレクチャーをお願いし,オーバービューと現時点における問題点を整理していただく企画とさせていただきました。ご担当いただく座長の先生方には大変な負担をおかけすることになりますが,なにとぞ宜しくお願い申しあげます。内科,外科,放射線科,基礎系のcollaborationで本学会の特長を活かしたものになることを期待しております。ワークショップでは脈管学に関する12のupdateなテーマを取り上げました。Young Investigator Award(YIA)には36題の応募をいただき,一次審査で 8 題を選ばせていただきました。当日の発表会場に多くの会員の皆様がお越しいただき,激励くださいますようお願い申しあげます。一般演題は学術集会で最も重要でありますが,今回は口演,ポスター発表をあわせて229題採用させていただきました。活発な意見交換をお願いいたします。
 学会第日3目は市民公開講座「リンパ浮腫をより良く知るために」と「弾力ストッキングコンダクター講習会」を日本静脈学会,日本リンパ学会との共催で開催いたします。リンパ浮腫に対する取り組みはやや遅れている感があり,患者,医療関係者への正しい啓発活動が求められております。また,深部静脈血栓症と肺塞栓症はmajor外科手術周術期リスク管理の観点からも大きな課題となっており,専門知識を持った弾力ストッキングコンダクター養成が要求されております。関係各位のご理解とご支援をいただき,多くの方々のご参加をいただきますようお願い申しあげます。
 札幌で脈管学会総会が開催されるのは,第15回(杉江三郎先生,1974年),第31回(田邊達三先生,1990年)に続いて 3 度目となります。北海道の秋は海の幸,山の幸が豊かに揃う味覚の季節でもあります。さわやかな秋空の中で,札幌の地に多数の会員がお集まりいただき質の高い学術集会を成し遂げるとともに,学術集会後は疲れた頭を十分リフレッシュいただける学術集会になるよう教室員一同努力いたしております。多くの会員のご参加を心よりお待ち申しあげます。

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